今年のGCUCは一味違った

hagi に投稿

GCUCの本セッションが本日2018年4月23日より開催されている。

GCUC創始者のLizは冒頭の挨拶で最も大事なリソースは時間ではない、健康であると言い切った。最初の講演こそCarstenさん定番のGlobal Coworking Survayからの発表だったが、次のセッションがHEALTH IS THE NEW BLACK。このBlackは黒字源と訳して良いと思う。Lizが言っている健康はWellnessで「身体的、精神的、そして社会的に健康で安心な状態」を指す。身体的な健康だけではなく、精神的かつ社会的健康で安心な状態という意味を込めていて、今日のカンファレンスのテーマはほぼ全てそのメッセージを受けた発表になっている。私が出始めてからのGCUCでテーマを明確にした回は初めてで、どう見ても異例である。Lizは恐らくかなり意識的に流れを変えようとしているように見える。

はっきりと名前を上げはしないが、WeWorkに象徴されるような言わば独占利益を目指すような動きはCoworkingにはそぐわないという強烈なメッセージが込められている。前述した本編最初の講演はHEALTH IS THE NEW BLACK。これは、Well building instituteの発表である。オフィスを健康にというテーマで基準が定められていて、日本でも大林組の施設で認証が通っているが、従来のハード面からの安全基準にとどまらず、そこにいる人、働く人の健康(ウェルネス)を維持するための基準となっているところが新しい。このセッションではWorkbar Back Bayがコワーキングスペースで初めてWell Building認証をクリアした話が記事を含めて紹介された。

スペースの空間設計に携わる人達のパネルセッションDESIGNING FOR HUMANS- NOT JUST PROFITもWellnessがキーワードとなった。補題のnot just profitはWellnessに注目した空間設計を行えば、スペースは儲かる(差別化できて来場者も単価も上げられる)が、それだけではなくて利用者の笑顔が増える、つまり人間のためのデザインは利益追求を超える効果があるよ、というメッセージである。ちなみに、シェアオフィスはもちろんコワーキングとレストランや喫茶の融合形態のスペースも生まれているので、登壇者の一人がもうコワーキングという言葉にこだわる時期を終えて新たな言葉を考えたほうが良いのではないかという発言をしたら、会場から異論が続出した。Wellnessは空間だけに依存するのではなく、そこにいる人達を含めて実現されるという視点だからコワーキングという理念なくして実現できないという主張である。もっともな話である。大資本が入ることで、お金をかけて居心地の良い空間を提供する場所は増えているが、やはり大事なのはそこに集う人たちのWellness - 「身体的、精神的、そして社会的に健康で安心な状態」の持続的向上を狙うのが筋という流れで登壇者も会場も一致していったところは感激的ですらあった。アメリカは競争社会で弱肉強食が支配しているように見えるが、同時に競争社会で生き残りつつ本当に良いことをやろうという想いを高く評価する力も強い。恐らく、今日GCUCに出席していた人の多くは、その善良な想いに感化されて前を向く気持ちになったと思う。Lizの強いメッセージが効果を発揮しているように感じられた。

THE FUTURE OF COWORKING IS FEMALEとCOWORKING IN THE FUTURE CITYの2つのパネルではどちらも格差の問題が話題となった。前者は男女格差、後者は経済格差の話に注目が集まった。GCUC参加者恐らく6割が女性で、北米ではオペレータの5割以上が女性である。しかし、中々融資や投資がつきにくい問題や、大家が契約をためらうケースが米国でもまだまだ多いようだ。女性専用スペースに限らず女性が立ち上げているスペースはWellnessに配慮が行き届いている事が多く、実際に訪問してみた時に男性にとっても居心地が良いケースは多い。米国は強い競争社会で、失業者が社会復帰するのも大変。しかし、女性が運営するスペースで精神的な健康と安心を得て起業に至るケースも多く報告されている。会社に属して内部の競争と外部の競争に対するのではなく、サードプレースの安心に包まれた状態で外を向くという事ができるのであれば、格差の問題への解決にもつながるだろうと思わせるセッションであった。