安倍氏のレガシー

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今日2022年7月11日のTV朝日の放送で、世耕氏が安倍氏のレガシーとして、

  1. 特定秘密保護法
  2. 平和安全法制(集団的自衛権に関する憲法解釈を変更する閣議決定を含む)

を上げていた。どちらも、憲法違反の声のある極めて大きな変革である。

関東弁護士会連合会は重要情報を開示しない特定秘密の保護に関する法律が憲法違反とする大会決議を行っているし、日本弁護士連合会は安保法は立憲主義に反し憲法違反ですという声明を発表している。加えて、集団的自衛権の行使容認に反対する決議も行っている。自民党としては、その後の総選挙でも勝ったのだから、国民の支持は得られているという立場だが、国民の支持が得られるか否かと憲法に反するか否かは別問題である。

憲法改正の議論の中で、同時に2つの問題に対して禍根を残さないような整理をしないと安倍時代と同じ無理押しが続くことになる。納得の行く説明を確立し、なるほどそういう理屈なら容認しようとなるか、法律の一部修正をしようとなるかは今はわからないが、数の力で押し切るのは感心しない。現実問題として、自民党は単独でも多数の支持を得ているわけだから、数の力で押し切ることはできるかも知れないが、無理を通せば押し切られた方は黙っていられない。事実がどうかはわからないが、憲法9条が日本の平和を支えているという考え方はあるし、非戦の国であることを守りたいと思えば、集団的自衛権の保持はありえない。

当然、非戦の国であり続けることは無理だという考え方もあるだろう。護憲派だって、国が滅びるて良いと思っているわけではない。憲法を変えて戦争をできる国にするというのも選択肢の一つだろう。工夫に工夫を重ねれば、非戦の国を守れるかも知れないが、相手のあることだから非戦の姿勢を守っていれば戦争になるわけがないなどと言えるわけがない。

安倍氏は豪腕で上記2点を押し切ったが、違憲だと考えている人は私だけではない。さらに自衛隊の違憲性に関しても疑義はある。私は、自衛隊は違憲だと思っている。ただ、自衛隊が国民の安全に大きく貢献していると思っているし、違憲だから廃止というわけにはいかない。防衛的な側面と、災害対策での機能を単純に切り分けることもできないだろう。憲法を改正して、自衛隊の違憲性に関する懸念がないようにしたほうが良いと思うし、自衛の範囲を再定義してやって良いことを縛る必要はあるだろう。議論は紛糾するだろうが、徹底的に議論して法制化を進めてもらいたい。防衛問題だから、公開できないこともあるだろうが、ギリギリまで公開を進めないと禍根を残す。

私は、無理筋を通した安倍氏の影響下で憲法改正を行うのは嫌だった。有能な方だと思うし、講演を聞いた経験で花のある方だと思った。前後して谷垣氏の講演を聞いたのだが、中身では圧倒的に谷垣氏のほうが充実していたが、安倍氏の講演を聞くと前のめりになる魅力を感じたのだ。正直に言うと、安倍は危険だと思いはじめたのはその時だ。中身でなく人を引きつける能力は独裁と紙一重だからだ。

しばらくは、亡くなっても安倍氏の影響は続くだろう。しかし、憲法改定は何かをやるのに都合が良いように変えるのでは困る。現在の憲法を超えるものであってほしい。国の繁栄を願うものであるのは当然だが、ナショナリズムを入れてはいけないと思っている。ぜひこの国に住みたいと世界の方々に思われるような基本ルールであってほしいと願うのである。

勝てば官軍という考え方には持続性はない。強いことに惹かれてはいけないと思う。

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