『「真東の方向」と「真東に進む」の違い』を読む

hagi に投稿

「真東の方向」と「真東に進む」の違いで東京の東はチリという話が書かれている。直感に反する。北半球で東に進んだから南半球に行くわけ無いだろうと思うのだが、「東に進む」を北極から南極を結ぶ先に対して90度の方向に線を引くとチリに到達する。混乱するが、地球儀上で、東京からぐるっと東京に戻ってくる最大距離の円(大円)、あるは地球儀で東京を真上に位置して、北極と結ぶ線と直角方向に地球儀を切断すれば、チリを通る半球になる。東京(北緯35.7度、東経139.7度)の真裏は南緯35.7度、西経139.7度になるのだから、真東に一周する道も真西に一周する道も地球の裏側を通ることになり、進行方向は逆だが同じ道となる。引用元の記事の「正距方位図法(東京中心)に描いた等角航路と大圏航路」の図で見れば、東京を通るその道は東京でも真っ直ぐなのだが、「メルカトル図法に描いた等角航路と大圏航路」の図で見ると直線に見えない。地球を球に近似して線を一周引けば、平面地図に投影された曲線はサインカーブになる。

人間にとって地図は位置を捉える上で、とても有用なものなのだが、平面(2D)に投影する制約があるので、空間(3D)上の直線が直線にならない。改めて見てみれば、メルカトル図法だと緯度線と経度線が直行していて接点での角度は90度に見えるが、球面上の線として捉えれば赤道を除いてその角度は90度より小さいことに気がつく。北半球であれば、角度で直行する線は東であれば西であれどちらも南に向かうことになる。

球面三角形の角度がわかりやすいが、赤道と任意の2つの緯度線で作る三角形の内角の和は最小(極小)180度、最大(極大)360度となる。最大さで2倍だ。ユークリッド幾何(2D)の常識は通用しないのである。緯度線は大円なのだが、経度線は赤道以外大円ではないことを失念して誤る。全球ベースの話を地図の人と話しているとしばしばすれ違う。

現代の人で、地球がほぼ球体であることを否定する人は多くないと思うが、航空機などの大きな動きをつかもうと思うとユークリッド幾何学で考えると現実に合わなくなることを理解できている人はそれほど多くない。そして、私自身もユークリッド幾何学が染み付いているから、直感的にはメルカトル図法の東を東と考えてしまう。その上、大きな動きで考え始めると相対論も顔を出してきて、時間の問題も無視できなくなる。

自分が理解している範囲も十分ではないだろうし、間違っていることもあるだろう。しかし、可能な限り現実を現実のままバイアスなく客観的に捉えたいと思っている。

補足:
Googleマップでも東京の東はチリ(東京の東はハワイ)を確認することができる。東京を地図の中心において、右側にハワイが入る程度に縮尺を上げる(描画範囲を広げる)。地図の詳細から地球表示をオンにすると、ハワイはほぼ東京の真右になる。地球表示をオフにすると右下になる。ハワイの緯度は東京より低いから、メルカトル図法だと右下になるが、地球表示は地図の中央を通る縦線は経度線となるので上は北。地球表示の地図の中央を通る横線は緯度線ではなく中央を通り、経度線と直行する大円を表す線となる。チリは裏側に位置するので見ることはできないが、アメリカが右上に位置していることから考えると、きっと裏側はチリなのだろうと想像することはできる。

さらに、縮尺を下げ、銚子あたりが右に位置するような範囲にして、オン・オフを切り替えるとオンにすると銚子が微妙に上に動くのを確認できる。まっすぐ東に進むと地球表示オンの線となるが、地図は投影座標系を用いて平面化されているので、まっすぐ東に進むというのが緯度線に沿って進むというように投影されている。それが間違っているということではない。そういうルールで描画しているだけなのだが、真東に向かってミサイルを打てば、地球表示の軌道を飛ぶ(コリオリとかは無視)。

分かってしまえば、それだけのことなのだが、直感に反するのでどうしても認めることのできない人は少なくは無いだろう。

Googleマップは動かすことができるので、3D的な認知を容易にするが、羽田氏は複数の投影座標系を用いて2Dの地図でその事実を説明しているところがすごいと思う。Googleマップの地球表示では半球しかカバーできないが、正距方位図法(東京中心)だと、全球をカバーできる。逆に正距方位図法(東京中心)の地図を直感的に理解することは難しい。しかし、モデルを理解すれば「東京の東はチリ」を理解するためには役に立つ。正距方位図法は中心から見た時に地球上のどこかとの(大円)距離が正確になる投影座標系だ。だから、中心以外からの距離も方角も拾えない。感覚的には、軍事で言えばICBM向けの地図だ。

Googleマップの地球表示は、インタラクティブだから使えるものだ。紙の地図は容易に中心を移して再描画することはできない。だからこそ、沢山の工夫が蓄積されてきていて、良くできている。しかし、だからと言って投影された結果から考えるのが正解だとは思わない。結局は実体がどうなっているのかを知れるかどうかなのだと思う。東京の東はチリがどういうことかが分かればそれで良いのだ。メルカトル図法だと緯度線を直線にする代償として角度や距離の正確性は失われている。極地に近くなければ直感に会うし、精度も許容できるというだけだという事実を知っておくことは悪いことではない。

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