日本政府は地元の理解を得ることなく進めないとした約束を破ってALPS処理水海洋放出を強行した。どう考えても約束違反だ。
一方『僕はどうしてALPS処理水海洋放出を「完全に安全」と言うのだろう』に書かれているように年間追加被曝量で見れば問題ないだろう。ただ、実施者と検査者の独立性が十分でないなどの問題はあり、科学的分析の妥当性には疑義は残るし、引用記事ではトリチウムは平気的な意見が述べられているが、言い切れるほど安全かはわからない。
処理水に関しては、復興省の『Q ALPS処理水にはトリチウム以外の放射性物質が含まれているのではないか?』がわかりやすい。引用元の『経済産業省「ALPS処理水について」p.19』と『東京電力「福島第一原子力発電所 多核種除去設備等処理水の二次処理性能確認試験結果(終報)」(令和2年12月24日)p.2』には、以下のように書かれていて、ALPSの処理能力がすごいことがわかり、取り切れなかったものは再度浄化すればトリチウムを除いて放射能汚染の元は取り除けるのは間違いないと考えて良いだろう。
さらに『ALPS処理水タンクにおける化学物質の分析について』を見ると、化学汚染のリスクも小さいように見える。
私は、東電は相当頑張っていると思う。東電の経営責任や警告があったにも関わらずそのリスクを軽視した政府の責任は逃れられるものでないとしても、リカバリー作業は着々と進められている。もちろん、完全な遂行などできるはずもなく、決断には常にリスクが伴う。
ALPS処理水海洋放出という決断に対するリスク判断は科学的に見て、負って良いリスクという判断は私はありだと思う。一方で政府は被害者との約束を守っていないから信用されるわけがない。東電が頑張って作業を進めていても、その動きの正当性を主権者が理解できるようにする責任は政府にあるが、統一教会問題も、基地問題も、もりかけさくらも、電源喪失問題の責任もごまかし続けているようでは決して糾弾する声が収まるわけがない。党派性の問題に帰着するのは適切ではない。
ダーティな運営を許していれば、別のところで新たな問題が発生し続ける。
ALPS処理水海洋放出という決断は科学的リスクという面で許容可能だとしても、約束を破って強行したという政策判断リスクという面では取るべきでないリスクを取ってしまったのだと考える。
権力者がやっちゃえば何とかなると暴走し、主権者がその暴走を許してしまうと、結局は主権者に不利が跳ね返ってくる。今回の件で、政府は暴走が高くつくことを学んでもらいたい。ALPS処理水海洋放出という決断が妥当だとしても、これまで暴走し続けてきたツケが回ってきている。急がば回れ。