ワークスタイル変革とサードワークプレースに関する所信表明

hagi2018/03/12(月) - 15:29 に投稿

日本テレワーク協会の研究部会で文書をドラフト作成するにあたって、自分のサードワークプレースに関する所信をまとめたのでブログにも掲載しておきます。

はじめに

私は、現在起きているワークスタイル変革の動きは、ICT技術の進化に伴う環境変化への対応と考えている。

インターネットの普及、スマートフォンを初めとする携帯端末の進化、PCの軽量化と電池の容量拡大等で、従来できなかった多くの業務が、離れた場所で実施可能になった。電子メール普及前には、訪問、郵送を必要としていた業務の多くが電子メールで代替され、上手に使いこなす人、組織と、使いこなせない組織で競争力に徐々に差がついて気がつけば追いつく事のできない差が生まれてしまって消えていった企業もある。リモートワークは世界中で取り組まれている主要課題でもあり、もう一つのICT技術進歩への対応と言える。

サードワークプレースは、リモートワーク、ワークスタイル変革への寄与を訴求するサービス産業のプロダクトである。同時に、従来からのストック型の不動産事業をサービス化してフロー型に変えたものでもある。

サードワークプレースの動向

サードワークプレースをサービスオフィスという形態で企業向けにグローバル展開している代表的な企業にRegus、ServCorpがある。それぞれ1989年、1978年創業とインターネット普及前から営業している。一方、インターネット一般化に伴いコワーキングスペースが1995年頃から産声を上げ、主に個人向けのワークプレースサービスを提供し始めた。日本でも2010年から営業が始まっている。同じ2010年にニューヨークでWeWorkが創業し、フリーランサーからスタートアップ、大企業のサテライトオフィスや支店機能を広範にサポートする事業を開始した。ソフトバンクがそのWeWorkに44億ドルを投資するというニュースが出たのは2017年で記憶に新しい。既にメンバー数は18万人を超えていると言われている。

日本の将来のためにサードワークプレース活用は不可避の課題

日本は、経済水準から言っても高度なICT機器を持つハードルは低く、ネットワークスピードも平均20Mbpsと世界トップである韓国の28Mbpsに及ばないものの米国の18Mbpsよりも速い。技術的な環境は十分整っている。

他国と異なるのは、少子化にも起因する人不足の深刻さである。良質な労働環境を従業員に提供できなければ新卒を獲得するのも難しくなっている。在宅を含むリモートワークへの対応はもちろん、サードワークプレースの有効活用、選択の多様さは企業の競争力に直結する課題であることは多くの大企業経営者が理解している。

一方で、粘土層と呼ばれるワークスタイル変革への抵抗勢力は根強い。また、サードワークプレースの活用は、従来オフィスを固定として扱っていた会計モデルを一部変動費として考え直す方が望ましいことなど、本質的に経営パラダイムの変更を迫るハードルの高い改革である。

サードワークプレースの有効活用に向けて何をすべきか

重要課題は2つ。第一はリモートワーク体験の継続的な改善プロセスが回るようにすること、第二はサードワークプレース時代に環境適応した制度の確立である。

WeWorkの台頭も刺激を与え、サードワークプレースの提供事業者は増加しており、関心も高まっている。一方で、リモートワーカー、モバイルワーカー視点に立つと、サードワークプレースの検索も容易ではない。レストランを検索するより難易度が高い。業務の合間に立ち寄る喫茶店とは異なり個人負担可能な価格を超えるサービスでもある。加えて機能面でもWeb会議や電話が可能かとか、集中できる環境かとか、高度な検索が必要になる。もちろん、その費用を経費として申請できなければそうそう使うことはできない。経験を積まなければ有効活用のノウハウも溜まらないし、生産性も高まらない。リモートワーク体験は適切な施策無くして高まる事はない。

企業は制度の面で対応しないわけにはいかない。粘土層は時代の変化に抵抗し、中長期的に見れば企業の成長を阻害する。ワークプレースの選択肢を制限すれば、生産性向上の機会も、何らかの課題を有する従業員の持続的就労の機会も奪う。合理的なワークスタイルを選択しようとする従業員に選択の自由を保証する制度を構築する必要がある。まず手をつけるべきなのは就業規則だろう。

サードワークプレースを使えば、従来とは異なる経費が発生する。生産性の向上で吸収出来れば良いが、問題はそう簡単ではない。ワークプレースコストとして引いて見れば、固定費として扱っているオフィス賃料は、占有(在席)面積×時間の案分で変動費扱いとして部門配布すると多くのケースでサードワークプレースのサービスコストより大きくなる。持続的なサードワークプレース時代への対応を念頭に置いた諸制度の改定も必要となろう。国もワークプレースの所有モデルから利用モデルへの転換を促す税制等制度改定を検討する余地があるかも知れない。

おわりに

サードワークプレースは、まだ黎明期にある。黎明期に挑戦すれば、先行者利益が得られる可能性もあるし、不利益を被るリスクもある。しかし、遅かれ早かれ避けて通ることはできないだろう。

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