ずいぶん前にずっと使っていたKindleが起動しなくなっていて、Androidタブレットで代用していたのだが、AmazonのセールでKindle Paperwhiteを購入した。これを機会と思って、米澤 穂信 の 王とサーカスを読んだ。Kindle化されたので、気になっていたのだ。
2001年のネパール王族殺害事件に重ねて書かれたもので、その直後の殺人事件が書かれている。米澤氏らしい読ませる内容で楽しませてもらった。カトマンズの街の描写も素晴らしい。この本に出てくるような、怪しげな外国人は、本当にいそうだと思っている。
執筆後に大地震があって、街の景観は一部変わったし、再度ゼロから街づくりといった側面はあるが、ちょっと物悲しい感じと、したたかでたくましい感じは今の日本にはないもので、恐らく今もこの小説に書かれている雰囲気とあまり変わらないのではないかと思う。この小説を読んでからカトマンズに行くと、初回であってもかつて来たことのある街に感じられるかも知れない。
私がネパールに通い始めたのは2013年。前職を辞した後、システム開発のパートナーを探してビジネスを始め、現在は契約が切れているが、昨年2017年まで何度もカトマンズを訪問した。正直に言って、街は汚いし、衛生状態は必ずしも良くないので、私の知っている地元の人はしばしばお腹を壊して病院に通っていた。しかし、エネルギーは溢れていて、学校や日本語を含む言語教室は多数あり、前を向いている若者は多いように見える。激しい格差は感じるが、教育熱心なところを見ると、頑張れば出世できると考えている人は多いのだろうと思う。サガルのような少年と接する機会は無かったけれど、学校に行けないでいるように見える子供はたくさん見た。
軍人も警官も良く見るし、しばらく経つと多民族国家であることが分かってくる。ゴルカ兵の話も耳にするようになるし、民族ごとに祝日も異なる事も分かってくる。長い歴史の果てに今があり、これからがあると感じさせる地だ。しかし、やはり日本に比べるとかなり貧しい。ヒンドゥー教はもちろん仏教で考えても聖地を有し、誇りをもって当然の地なのに悔しい思いもあるだろう。何か、そういったねじれの中から、犯罪が起きる事もあるのかも知れないと思ったのであった。