欧州のCOVID-19感染拡大で考える

hagi2020/11/09(月) - 09:46 に投稿
whoの比較グラフ201109

国別の集計で、アメリカは一日の陽性判明者では一番多いが、それはアメリカの人口が多いせいもある。人口あたりの陽性者数だと、WHOの集計グラフを見れば一目瞭然で、フランスはアメリカより3倍以上の密度があり、日本は比較してみるとほぼゼロでよく見ると春と8月頃に山があるのが見て取れる。

春はイタリアの惨状が世界を震撼させたが、グラフを見ると分かるように6月頃には感染を抑え込むことに成功している。現在、人口あたりでは最悪レベルのフランスも6月末頃にはかなり抑え込みに成功していたし、エストニアは夏の間は日本より陽性者数が少ない状態が続いていた。しかし、残念ながらエストニアも感染を止めることができず、他の欧州諸国に続いて急激な感染拡大が起きている。イタリアも7月後半から8月にかけては新規陽性者は人口比で日本より低い。冷静に数字を読めば、日本は新型コロナ対策で優れているとは必ずしも言えないのである。一度高まった感染を抑え込んだという意味では、欧州の対応は高く評価されて良いと思う。

EUでは、6月15日に域内移動制限解除を勧告し、7月からは域外からの移動も慎重に認めるようになった(EU、日本含む14カ国からの渡航制限解除、米国・インドなど除外、対象国は14日ごとに見直し)。フランスで雲行きが怪しくなってきたのは7月。経済再開ができればそれに越したことはないので、抑え込めたら慎重に緩めていくのは当然の動きだと思うのだが、問題は雲行きが怪しくなってきた時に止められていないことだ。当たり前だが、感染力を持つ患者の密度が増えれば、従来と同じ行動をしていても感染リスクはどんどん増大していく。仮に5日間感染力があるとすると、フランスだと200人強に1人が感染力をもっている計算になり、都市部で外に出ればほぼアウトだと考えたほうが良い。現在の日本では、公共交通機関の利用で感染する可能性はほとんどゼロだと思うけれど、それは感染者の密度が低いからだと考えるべきだろう。

アメリカは広い。人口密度もまちまちで、州単位あるいはCounty単位で見ると違う値が出る。フランスも同様だろう。エストニアは9月後半にピークを打ったように見え、再び抑え込めるかと思ったのだが、今は急拡大している。細かい情報が開示されていて、首都タリンを含む地方の値は、かなり高い。

私は疫学の専門家ではないが、コワーキング絡みのWeb会議やWebinarを通じて、世界各国で運営者がどう感じているかを聞いたり、近々に渡航したいと思っているエストニアの方の話にも接している。その中で、印象に残るのは、一度感染拡大を抑えられた後、多少緩めても大丈夫な時期が続き、リスクを恐れないチャレンジャーだけではなく、より広い範囲で緩んでくるように見えることだ。そして、増加が数値として見えてきても、そうそう簡単に緩んだ行動は戻らない。理由の一つは、チャレンジャーが慎重な人を臆病者扱いする傾向があることにあると思う。危ないところギリギリで乗り切る俺は強者だという勘違いで、危ないことをやれば一定の確率で失敗する。強運が続く人は確率分布に従う。正常化バイアスの一種だろう。

もちろん、公衆衛生の専門家は、そういう人間の心理的な側面も十分理解して検討しているだろうが、首長が相当理性的に見えるドイツですら十分に抑え込めていない。強権的な統制以外に抑え込む手段がないとすれば、民主主義は幻想だったとうことになるだろう。日本の今後も心配だが、欧州の国々の健闘を期待したい。きっと民主的に解決していく道はあると思う。

まだ今後のことは分からないが、アメリカの選挙の状況を見ていると、紙一重で軌道修正の希望が残っているように見え、本当に険しい道なのだろうと思う。短期的には強権的な政権が無茶苦茶な方法で抑え込むことができるかも知れないが、その副作用は極めて大きいだろう。

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