UK、フランス、アメリカの状況を見ていると、ワクチンを打てばなんとかなるというのは幻想に思えてくる。反ワクチンではない。事実、現実を見る必要がある。
ワクチンの効果は明らかにあり、少なくとも現時点では公衆衛生の観点から見る限りワクチン接種の拡大が望ましい選択としか思えない。しかし、ワクチンを打てば大丈夫と考えるのは適切ではない。つまり、暴露確率との組み合わせでリスク評価をして行動を決断するしか無いということだ。マスクで7割、ワクチンで9割リスクを減らせるとすると、組み合わせで97%感染確率を下げられる。1,000人に1人感染者がいる環境と10万人に1人の環境では、暴露確率は100倍違うから、後者の環境で無防備な状態で過ごすほうが、前者の環境でマスク・ワクチン対応で過ごすより安全ということになる。ワクチン接種後の感染数値はその当たり前の現実が明らかになったと考えるのが良いだろう。
ワクチン接種の加速は好ましいのは確かだが、それに頼るのではなく新規感染者増率Rtが1を超えたら、1を切るまで抑えるというのが正常な判断と考えた方が良い。発症間隔は4日から5日と推定されているので、2週間単位のモニタリングで自動的に規制をかければよいだろう。ワクチン接種が進めば、規制がかかる間隔が伸びていくはずだし、より緩い規制に変えることも可能になる。自動的にブレーカーが発動するようになれば、挑戦も可能になる。
ワクチン接種率の向上とともに死者数が抑制されるのを期待していたがデータを見る限り効果は明らかだが再び増加に転じていて、止めることはできていない。一方、UKもフランスもアメリカも猛烈な感染拡大を何とか抑え込むことができた事実は興味深い。つまり、瞬発力を発揮すればひどい感染爆発でも抑え込めることは実証されているということだ。残念なのは、各国とも既に3回以上緩めれば大変な状態が待っていることを経験しているのにも関わらず繰り返し同じ過ちを繰り返していることだ。止めるタイミングをつかめていないと言える。
科学は万能ではないが、強い思いや誇りで事実に目を瞑るよりは、数値モデルの精緻化に力を注いだほうが良いように思う。
飲み食いを共にするのは、人間関係上とても重要なことだ。これができないと様々な気付きが減ってしまう。感染を抑えるだけでは足りない。ただ、破滅への道が分かっていて避けられることも分かっているのに運を天に任せてその道を選択するのは愚かなことだと思う。
私は、やがていくつかの指標に基づいて自動的に規制が発せられる時期を迎えるだろうと思っている。リスクはゼロにはならないが、対処方法がわかってくれば、合理的な基準に基づいて行動すればよいだろう。何となく、年末ころにはその形が見えてくるのではないかと考えていたのだが、もう少し時間が必要かも知れない。オリンピックは壮大な実験で失敗に終わった。安心・安全も公平も達成することはできなかった。まだ、全体としての環境がパンデミックの影響でバブル方式での防御では足りないほど汚染されていると考えなければいけない。
※各画像は、WHO COVID-19 Explorerから引用させていただいたもの