Wikipediaのアフガニスタン(2021年8月17日 (火) 22:30版)を読んだ。既に「2021年8月15日ターリバーンはアフガニスタン大統領府を掌握した。これにより約20年間続いたアフガニスタンの民主政権は事実上崩壊した」と記載されている。
歴史部分を読むと、イギリスとロシアのグレート・ゲームの影響を強く受けて来ているのが分かる。世界全体としては、民族自決指向から脱すべき時期が来ていると思っているが、その前に独立国として存在しているという認識に到達しなければ民意は収まらない。アフガニスタンのこれまでの政権はアメリカの傀儡色は明らかで、自分たちで自分たちのルールを決められないと感じる人は多かっただろう。武力闘争に発展させずに意見の差異があっても共に歩む未来を目指してルールを見直し続けていく以外に道はないだろう。対話を放棄して数や武力で制圧してもうまくいく可能性は低い。アメリカは武力でアフガニスタンを制圧し、民族自決の自由を奪ったのだから支持しない人が多いのは当たり前の帰結だ。権力の慢心といって良く本物の民主政権として民の支持は得られていなかったと考えるのが適切だろう。
日本でも先の敗戦で一度自由を失っている。進駐軍への憎悪もあった。一方で、当時の政府の情報隠蔽は明らかだったから、政府を組み直さない限り未来はないと考えた人もいる。明治維新の独立を維持したまま列強から学べたという成功体験も影響しているかも知れない。様々な幸運もあって、傀儡的な側面は今も残っているものの、民意として許容可能なレベルで独立は達成できているというのがコンセンサスだろう。民族自決意識が高まれば「強い国」への誘惑は高まる。「強い国」指向は少し長い目で見れば破滅への道であることは明らかで、望ましい道はシステムの持続可能性を高める不断の改善だろう。
タリバンがどの程度支持されているのかはわからないが、傀儡色は従前より低い。新政権を国の代表者として認めていくのは当然のことだと思う。そういう観点から見れば『EU、基本的人権尊重を条件にタリバンに対応=ボレル上級代表』は適切なリアクションに見える。できれば、アフガニスタンは刀狩りと警察権の整備を早急にやったほうが良い。新しいアフガニスタンの民のためのアフガニスタンの政府が機能するようになり、基本的人権尊重が憲法に組み込まれるようになって民が前を向いて進めるようになる日を期待したい。いわゆる先進国と協調できなければ民の生活は改善しないだろうから、原理主義的なルールは見直さざるを得ないだろう。タリバンにとって面倒でも女性の政治参加を進めないわけにはいかない。そのためには武器の統制はどうしても必要となると思う。民は内戦を望まず、少なくとも自分の生存権が保証されるべきだと考えないわけがない。
イギリスもアメリカも残念ながら日本も保守派は支配強化、傀儡化を目指してしまう。私は、EUの指導力に期待している。
9/11でブッシュは「強い国」を煽って共和党政権を維持したが、その施策が間違っていたことにアメリカの人々が気がつくのに20年もかかった。私はイギリスはいまだにグレート・ゲーム時代の罪に向かい合うことができずにいると思う。勝者は自らに対しても危ういのだ。勝者あるいは多数派の傲慢は罪深い。敗者あるいは少数者を人間扱いできなくなったら、人としても壊れてしまう。本人は自分は誠実だと心から思っていても人間性の一部が失われてしまうのだ。まあ、~ファーストなどという考えを強くもつ人を権力の座につけてはいけないということだろう。
※画像はWikipediaから引用したパブリックドメインの版図。インダス文明とメソポタミア文明の間に位置しているのが分かる。異文化が接する場所だったのかも知れない。