タリバンのリーダーはどんな人なのだろうか

BBCが、Afghanistan: Who's who in the Taliban leadershipという記事を上げている。

BBCの記事を読む限り、リーダーのアクンザダ師は軍事指導者より、宗教指導者として認識されているらしい。一般的に言えば、きちんとした人で筋の通った言動を行う人と考えるべきだろう。もちろん、原理主義的側面が強ければ融通がきかない剣呑な人である可能性もある。1980年代にソ連軍に対抗する活動に参加していたとある。60歳台の人物で、私とは概ね同世代である。柔い引用で恐縮だが『気分はもう戦争』の舞台の当事者だったと言って良い。私の中では漫画の中の世界でしかなかったし、アフガニスタンがどこにあるかについても知らないに等しかった。私が初めて海外に出たのは1987年でミラノ、その時に被差別を意識した。世界にはいろいろな人がいて様々な背景を持っていることを感じたが、所詮日本人、自分のいる位置からしか世界を見ていなかった頃だ。彼は、その時期にアフガニスタンの自立(独立)を意識して戦っていたのだ。しかも40年、すごいことだ。

かなり暴力的な組織でも、組織で然るべき地位を得るためには人望は不可欠である。後ろ盾があれば力の強さを活かせるシーンやいわゆる出世は可能だろうが、能力のない人が40年生き残っていくことはできない。彼のイスラム法解釈は一定の支持を得るだけの力があると考えるべきだろう。自分の常識と違うから理解を拒絶するという態度は適切とは思えない。もちろん、心の中を見ることはできないから、言っていることと考えていることが一致しているかはわからない。独裁者に変容している可能性も否定はできない。

BBCの書く組織図では、司法は独立しており、政府(内閣)と軍事担当2名の計3名が副官となり、17の組織が編成されていることになっている。単なるならず者の集まりではなく、組織論的にも相当程度しっかりした体制が組まれていると考えられる。西側では日本の報道も含めて暴力集団的な印象を振りまいているが、恐らくそれはミスリードだろう。

アクンサダ師も40年前とは変わっているだろうが、望ましいアフガニスタンの姿を目指して、長らく活動してきた。そして、アメリカ軍の撤退アナウンスとともに電光石火で全土を支配下に置いたわけだから、どう考えても只者ではない。今はまずは国を治めた段階だが、今後4人の重要人物とどの程度うまくやれるかはわからない。当然末端のタリバン兵は勝利に酔っているだろう。警察権の確立と正常化も容易ではない。次のステップで破綻する可能性も小さくないと思う。

一つの結果が出た以上諸国はまずは内戦が発生しないように一定のレベルで体制の確立に協力すべきだろうと私は思う。

40年も反体制側で活動していれば、相当な苦難を乗り越えてきているはずで、原理主義だけで乗り越えることができないことは身にしみて分かっているはずだ。内政上も人心の掌握ができなければ、言い換えれば民主主義を否定しても民意を得られなければ持続性が無いことも分かっているだろう。彼、あるいは彼らが考えるアフガニスタンのあるべき姿が形になるのはまだ先の話だ。原理主義者の反発は避けられないし、これまでの味方の相当数が敵に変わるだろう。

しかし、私は再び戦争(内戦)が繰り返されることなく時期に応じて実現可能な人権が最大限守られる形でアフガニスタンが独立する姿を見てみたいと思う。私は、私たちは今新しいアフガニスタンという独立国の誕生に立ち会っているのだと思っている。彼の地の民がともに独立国の民として建国に邁進し、国際協調しながら新たな一員として世界に認められる日が来たら良いと思うのだ。アメリカであれ、ロシアであれ、中国であれ、その野心に基づいて混乱の種を撒くようなことはしないで欲しいと(望み薄なのは承知の上で)願っている。