早速新型コロナワクチン接種証明書アプリをインストールしてみた。マイナンバーカードの読み取りに3回ほど失敗したのとパスポートのスキャンで名字が間違っていたので再スキャンしたが、割と簡単に証明書を表示できるようになった。アプリのできは及第点と言って良いと思う。
一方で、国際IDであるパスポート番号及び属性情報がマイナンバーと連携していないことがわかるし、マイナンバー(カードの属性情報)に英字氏名は含まれているから、スキャン時にその氏名と食い違いがあってもチェックしていないことがわかる(ひょっとしたら間違えを見落としたら次のステップでチェックされるのかも知れない)。
証明書は国際版と国内版があるが、証明書番号は変わらない。違いは英文表記であることとパスポート番号が記載されていること。後、国際版はバーコードがすぐに表示され、氏名と生年月日は無条件に表示されるのに対して国内版はバーコード、氏名、生年月日は自分で表示させないと出てこないようになっている。
欧州のデジタルワクチン接種証明書は2021年7月1日にリリースされている。今回のアプリのQRコードも恐らく通用するだろうが、よくわからない。デジタル庁のサイトを見ると、証明書そのもにについては厚労省の新型コロナワクチン接種証明書についてを参照するようにリンクされている。そこからさらに外務省の海外渡航用の新型コロナワクチン接種証明書が使用可能な国・地域一覧を参照するようにリンクされている。ここを見てもアプリが通用するかどうかはわからない。
ちなみに欧州のアプリの説明では、
The EU Digital COVID Certificate contains necessary key information such as name, date of birth, date of issuance, relevant information about vaccine/ test/recovery and a unique identifier. This data remains on the certificate and is not stored or retained when a certificate is verified in another Member State.
と書かれていて、欧州外でも複数の国がこのアプリを利用している。氏名、生年月日、証明書発行日、ワクチン接種関連情報と(各国IDやパスポート番号などの)本人を一意に特定する識別子を含むが、それらの情報が他国に拡散するわけではないと書かれているので、日本もそのまま使わせてもらうという選択肢もあったと思う。なぜ独自のものを作る必要があったのかを考えると日本にはこの本人を一意に特定する識別子として使えるものがないことに思い至る。マイナンバーは広く開示できないから店舗等で参照される証明書にマイナンバーを使うことができない。国外に出る人にはパスポート番号があるから、それを識別子として使えるので証明書が発行できるということだ。ちなみに欧州アプリは多言語対応で2021年12月20日時点でEU外でも28カ国で利用している。
マイナンバーの設計を失敗していなければ、日本はこのアプリを作る必要などなかったのだ。
上記のデジタル庁からのリンクたらい回しは縦割り行政と言うこともできるが、整理の主体がお上となっていて国民を中心に考えられていないという根本的な問題が原点にある。こども家族庁もそうだが、管理主体目線で行政を行えば必ず不公平と非効率に至る。デジタル時代は個に注目しないとうまく行かない。
個人のeIDとそれに紐づく情報は個人に属するものという大原則に立てないと、その原則に基づいて行う国の行政システムから取り残されていくことになる。本件に関して言えば、欧州のアプリを店側でも使えば、海外から来た人を受け入れる時にも最初から国際対応になる。このままでは日本はやがてデジタル・ガバメントに大失敗した事例として引用されることになるだろう。デジタル・ガバメントは国から考えちゃだめだ。民から考えないといけない。行政が民を支配するモデルは衰退に至る。
私は中長期的にはオープンソースモデルに向かうことになると確信している。