今後の防衛ってどうなって行くのだろう

hagi に投稿

ウクライナ侵攻を見ていると、どうやれば戦争を起こさないようにできるのだろうと考えさせられる。

武装強化以外の道はないと考える人もいるだろうが、戦争になってしまった時、強い武力が備わっていればより悲惨になる。侵攻されるのは耐え難いが、敵基地攻撃能力を持つということは、他国にいる人を殺すことを意味する。敵国と言えど、そこに住んでいる人は同じ人間であり、敵兵であっても同じ人間である。仮に持っていたとしても使ってはいけない能力だ。

ウクライナでは、非軍人がロシア兵を殺害するような自体が起きている。ロシア兵は住民から見ればとても歓迎できない敵だが兵役も仕事に過ぎない。ウクライナ侵攻はウクライナのネオナチに苦しめられている親ロシア派を救済する特別作戦なので、ロシア兵は民の開放を担う使命を負わされて来ている。しかし、行ってみたら全く歓迎されない。日常生活を破壊して歓迎されるわけはないのだが、仕事だから命令に従って行動するしか無い。(アメリカはベトナムほかで何度も同じ過ちを犯している。)兵站が尽きれば引くしか無いし、武器が尽きれば破壊攻撃は続けられないが、強い備えがあれば戦争は長期化する。少なくとも、現場にいる兵士はとうの昔にこれが救出作戦などではなく領土を奪う戦争であることは身にしみて分かっているだろう。救出目的なら、破壊行動は最小でなければいけないが、今起きているのは民の命より領土の確保が優先している。ウクライナ軍も領土の確保で対抗していて、住民の生活はそれに劣後しているのが現実だろう。悲惨である。

香港のことも考えてしまう。戦争があったわけではないが、自由が失われたと考えている住民は確実にいる。行動も制約され政府を支持しないと逮捕されてしまうこともある。香港は、中国にとって脅威だっただろうかと考えるととてもそうは思えない。中国の為政者香港や台湾は自分のものだと考えていただけなのだと思う。住民の中にも大きな中国と一緒になったほうが有利と考える人もいるかもしれないが、束縛されるのは真っ平だと考える人は少なくないように思う。

どこに住んでいても、行政に不満のない人はいない。日本国内でも地域ごとに行政サービスに格差はあるし、富の再配分には万民が満足する正解はない。ただ、移動の自由があれば耐えられなければ引っ越せば良いことになる。当然、多くの人が集まってくる場所もあれば過疎化が進む場所もある。(国、合衆国やEUなど)移動の自由のある範囲で考えると、過度の集中は不経済だし過疎化が進むと公共サービスの提供も難しくなる。再配分の原資が大きければやれることは増えるが、域内での奪い合いは避けられない。権力と利権は結びつきやすい。権力が腐って公平性が失われると、政治が不安定化する。ただし、強者への幻想が生まれると不公正が許容されてしまうことがある。一番危ないのが愛国心の扇動(過去の美化)だ。

ウクライナは再独立した国だが、バルト三国も再独立した国々だ。EUに加入しEUROを通過としているから、EU市民としての移動の自由の権利は確保していて、訪れると民の希望が感じられる。過去の美化ではなく、良い未来の追求に心が向かっている。必ずしもまだ豊かではないが、自由が活力の源泉であることが感じられる。

ウクライナはロシアにとって脅威だっただろうか?

隷従しないとは言え、武力的には脅威だとは言えないだろう。しかし、ウクライナが民主化して活力が増し経済的に成功して行くのはプーチンは見たくないだろう。もしそんなことが起きて、その情報が流ればロシアの誇りが傷つけられるからだ。愛国心の呪いが解けてしまう。ウクライナに住む多くのロシア語話者は既にその呪いは解けていて、ロシアに併合されることをもはや望んではいない。所謂遠心力は既に働いているということになる。そういう意味ではロシアの支配者にとっても、ベラルーシの支配者にとってもウクライナの民主化と成功は大きな脅威と言える。政治が若返って、新たな動きが生まれたことが脅威の源泉となったと考えると皮肉なことだ。

私は、今の日本には、侵略したくなるような魅力はないと思う。中国にしろ、ロシアにしろ、武力で占拠できたとしても統治することは困難だろう。それでも怒らせれば攻めてくるかも知れない。相手にとって脅威になるのが問題だろう。

侵攻されるということを前提とした場合に守る優先順位はどうなるのだろうか。

君主制ではないのだから、民の日常生活が守られることが目的となり、それを維持するために行政機構が守られることには合理性があるとしても有事の時に民の犠牲を最小化することに注目すべきだろう。長期的な問題は別にして、短期的には私は領土より国民を優先すべきだと考える。例えばシェルターと避難手段の確保であれば、災害対策と合わせて計画することができるだろう。国土強靭化のひとつと言えるが、一人ひとりの民の安全確保への投資は望ましいことだと思う。地域の安全を守るために整備するドローンは日常生活の向上にも資するだろう。3Dプリンタや自律分散的な施策も望ましいし、エネルギー調達のローカル化も模索すべきだろう。都市部集中を緩和できる施策にもなり得る。安全と利便性、両面が向上する。軍の増強よりメリットがあると思う。

もちろん、更新の必要な兵器はあるだろうが、私はミサイルを持ってもしょうがないと思うし、行政機構のユビキタスワーク化を進めて、どこかを叩けば麻痺するような状態から脱するようにする方が現実的だと思う。

愛国心を煽られないようにしないといけない。ほとんどの政治家が防衛の必要性を強調しているが、ウクライナが理不尽に侵攻されたことをもって過度に反応するのは現実的だとは思わない。他国にとって脅威とならず、自国の持続性、レジリエンスが高まる方法を必至に考えることから逃げてはいけないと思う。

斜陽な国は、一発逆転を狙おうとする野心を持ちやすい。大変危険なことだ。愛国心の罠に落ちてはいけない。保守は亡国。