宗教と政治

旧統一教会問題で政教分離の話に注目が集まっている。

選挙の時期が来ると、創価学会の人たちが公明党候補のための宣伝活動をやっているのは良く知られている。なんとなく釈然としない思いを持っている人はいるだろう。創価学会の会憲には以下のように書かれている。

(教 義)

  • 第2条この会は、日蓮大聖人を末法の御本仏と仰ぎ、根本の法である南無妙法蓮華経を具現された三大秘法を信じ、御本尊に自行化他にわたる題目を唱え、御書根本に、各人が人間革命を成就し、日蓮大聖人の御遺命である世界広宣流布を実現することを大願とする。

私は、仏教のことはよく知らないが、様々な宗派があって一致と不一致がありながら、長い歴史に裏打ちされた教えで、創価学会が悪いものだとは全く考えていない。そして、信者の人たちがその理想を求めて諸制度の改革をしようとするのもおかしなことだと思わない。だから、自由意志で選挙活動を行うのもおかしくはない。

ただ、全ての宗教は信者を暴走させてしまうリスクを例外なく有している。信者が信者でないもの、その宗教を否定するものを敵と見なしてしまうことを完全に止めることはできない。どの宗教でも2世問題はずっと昔からあって、今後も無くなることはないだろう。

統一教会は、記事執筆時点でのWikipediaでは「統一教会は宗教学ではキリスト教系の新宗教」とある。個人的には、キリスト教系と分類すること自身に違和感がある。ロシア正教会はキリスト教の有力な宗派であることは論を俟たないがウクライナ侵攻を正当化するなど、受け入れがたいものがある。十字軍の歴史もある。現在のアメリカの福音派教会の押し付けがましいところは大いに反感を覚えている。

宗教団体は人の集まりだから、傷むリスクは避けられない。政党も同様である。

身近なところで言えば、日本基督教団の砧教会も1960年代の砧教会と現在の砧教会は同じものではない。名前が同じものであっても中身は同じではない。今の砧教会は牧師の総会決議違反の有無に関して事実解明を求める私の声を事実確認も行わずに退けるような状況にある。邪悪な集団だとは全く思っていないが、私は傷んでしまったと考えて争っている。法人として健全性を保つという観点では、牧師や古参役員の権威は時に邪魔なものでしか無い。どんな団体であっても、腐って有害な存在になるリスクはゼロではない。油断してはいけないと思う。

宗教の正邪を問うのは恐らく意味がない。宗派についても同じで、100年前のカトリック教会と現在のカトリック教会は同じものではない。聖職者も犯罪を犯すし、聖職者が犯罪を犯したら、その宗派、宗教が邪悪と言うのも適切だとは思わない。

仏教だから大丈夫ということもない。人の集まりは、人数が多くなれば影響力が大きくなり、影響力が大きくなれば腐敗のリスクも増大する。

政治団体は宗教団体とかなり似た性質をもっていると思う。自民党のかつての改憲草案では天皇を元首と位置づけていて、国を天皇を頂点とする管理構造をもつものにすることが正しいと考えていると言ってもよいだろう。主権在民という考え方とは相容れない。公明党が多数を占めるようになったら、会憲と国の憲法の整合性は議論しないわけにはいかないだろう。その時の政治団体、宗教団体の状況によって国民全体が大きな影響を受けることになる。その時期にその団体が攻撃性を帯びているか否かは極めて重大な懸念事項となる。

人の動きを決める空気、あるいは勢いは極めて流動的なものだ。宗教団体は時に一つの方向に向かって信者を動かし、それが大きな風となって信者でない人の判断にも影響を及ぼす。注意しなければいけないのは排他性だろう。

成文法はもちろん不文法、法執行の実態において信教に関わりなく公平に扱われるような状態が後退すること無くより前進するように日々油断なく監視し、声を上げるしか無いのだろう。まあ良いかとスルーしている内に人権侵害が深刻化したり戦争が始まったりするのである。どんな宗教団体でも不適切な行為は公平に是正されなければいけない。同じようにどんな政治団体でも不適切な行為は公平に是正されなければいけない。

稚拙な提案だとは思うが、宗教団体からの金の流れの透明化、宗教団体から一定レベル以上の収入がある法人に対して関連団体であることを公開する義務を負わせ、関連団体から政治家、政治団体への金の流れを公開すること、税制上の優遇措置は継続したまま宗教団体には信徒のマイナンバー管理を義務付け販売行為を含め献金等の申告を義務付けるのが良いだろう。公職選挙法等で政治団体はボランティア活動を含めて関与した個人のマイナンバー管理の義務を負わせ、政府から独立した機関で集計して議員、信徒の個人情報に抵触しない形で情報公開したら良いのではないかと思う。どうせいたちごっこだろうが、少しでも透明性を高めていくことには意義があるのではないだろうか。