経路検索・オープンデータ・GTFS

hagi に投稿

しばらく前にフィンランドのNuuksio国立公園に行った。その時、Googleでエストニアのタリンからの経路検索を行うと、フェリー、トラム、電車、バス、徒歩を含む経路が見つかった。

日本の経路検索とちょっと違うのは、ヘルシンキのトラムの駅にはID番号が振られていて、上りと下りで異なるIDが振られている。例えば、中央駅前のRautatieasema(鉄道駅)はフェリーターミナルから行く方の停留所にはH0301というIDが振られていて、逆方向にはH0302というIDが振られている。そのIDが経路情報として表示されるのだ。停留所名は同じだが、当然緯度経度は違う。ヘルシンキ中央駅にはホームの単位で、H0070からH0075とIDが振られていて、その単位で時刻表とリアルタイム運行情報が管理されている。駅名では、停留所やホームは一意に決まらないから、IDを振って厳密管理ができるようにするのは合理的と言える。エストニアでの経路検索でもIDは表示されないから、日本が特に遅れているわけではないが、バス停に行くというのとバス停IDの場所に行くというのは違う。交差点の向こうか手前かが明確になっているか否かで乗り遅れるか否かの分かれ道になることがある。

停留所等のIDには緯度、経度情報が点情報として割り当てられているが、実態は面積を持つ平面(あるいは空間)だし、同じ緯度経度でもフロアが違うケースもある。今後どのように変わっていくかはわからないが、現時点ではHSL(Helsinki Region Transport)はかなり良質な管理を公開で行っているように見える。オープンデータとしもサイトで一般に公開されている(zipで62MBの大量データ)。

経路検索という観点で見ていくと、Google 乗換案内についてにあるように現在は事業者が登録してGTFSに従って停留所情報と時刻表を提出している。またリアルタイム情報を提供することができる。HSLからはリアルタイム情報が提供されているようで、便の現在位置がわかるようになっている。

GTFSの静的フィードはバスの場合停留所情報と、時刻表なので公共交通機関であれば公開情報と言える。だから、オープンデータとして開示しても問題ないはずだ。Googleや他のサービス事業者に開示するモデルも悪くはないが、オープンデータとして業者を介さずに使えた方が良いと思う。実際、公共交通オープンデータ協議会などのサイトはあるが、GTFSデータはこの記事の執筆時点で31件しかない。データフォーマットの標準化やその拡張はアプリケーションを提供する企業あるいはエンジニアが提案することになるので、役所には限界があるが、オープン化が進まないとサービスの寡占化が進むリスクがある。オープン化が進めば、アプリケーションの競争が起きて進化が期待できる。これも、日本だけが遅れているわけではないが、フィンランド政府の取り組みはなかなかすばらしい。学ぶべきことがあると思う。

最近は、公共交通機関だけでなくGPS運行管理を利用する企業もある。将来は、全ての車両にGPSの搭載が義務付けられて、運転免許証もマイナンバーカード(電子証明書)に統合され、イグニションキーが電子証明書と連動し、あらゆる動きが記録される時期が来るかも知れない。技術的には、100%は望めないにしても、スピード違反や駐車違反も電子的に把握できる日は遠くないだろう。プライバシー保護はより重要になるが、安全性も利便性も高まるに違いない。公共交通機関であれば、その時ハンドルを握っていたのは誰か、実際の運行成績がどうだったのかが全て記録されるのは悪いことではないと思う。もちろん、ミスは起きるし、僅かなミスを許さないような制度だと成り立たないだろうから、法制にも影響を与えることになる。マイナンバーの義務化と一般任意開示はデジタル・ガバメントを実現する上では避けられない。得失を丁寧に説明しなければいけないが、私は前を向くべきだと思う。

どう品質の良いオープンデータの整備はデジタル・ガバメントの主要なターゲットの一つになる。

Googleがどれだけ便利でも、Googleを介さなければ利便性が得られないような未来では困る。一方、Google等のリーディング企業がデファクト標準化を進めることで現実が動く。日本にいても欧州にいても同じように頼りになるGoogle経路検索の恩恵に感謝しつつ、自分で公開データにアクセスするハードルが高いことに釈然としないものを感じる。

オープンデータポータルからバス停データを引くと、かなり昔のデータのままで更新されていないから、今の問題を解くにはあまり役に立たないのだ。

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