生活に困窮している人がいるのは承知しているし、この税がなければもっと豊かに暮らせるのにと思ってしまう心理状態が理解できないわけではない。私自身が、経済的な不安を感じているから物価が上がるのは正直言ってつらい。
しかし、安心できる安全な社会を維持するためには、そのために必要な資金は集めなければいけない。蛇口をひねれば水が出てくるのも、温水が出てくるのも、夏の冷房や冬の暖房のためのエネルギーを供給するための公共インフラは魔法のようにただでできるものではなく、インフラ投資の結果として得られているものだ。自分たちの生活を豊かにするためには応分の負担はしなければいけない。地球環境についても構造は変わらない。
いろいろな試みがあって、どの制度であっても欠点はある。しかし、税金が高くても、それが社会の安定や個々人の生活を支えることが信じられれば、不満の声は大きくはならない。恐らく、重要なのは透明性であり、為政者が説明責任を果たせなければやがて信頼は失われる。
税金が高ければ、民は自分に国家に対する発言権があると考えるようになる。逆に先導者は見せかけの負担を小さくしようとして権力を得ようとする。権力の維持には金がいるから、税収を減らしても権力維持に必要な原資を取らなければ持続性がない。その結果、本来民の福祉に貢献する原資が減り、ジリ貧を招く。
税金を減らせという主張をする人たちには注意したほうが良い。むしろ、税金を集めてどう使えばよいかを考えている人の意見を聞いたほうが良いと思う。