WHO新型コロナ「緊急事態宣言」終了を読む

FBで投稿した記事を加筆修正したもの。

NYタイムズのWHO新型コロナ「緊急事態宣言」終了に関する記事には、

On May 3, the W.H.O. issued an updated Covid management plan, which it said was intended to guide countries on how to manage Covid over the next two years as they transition from emergency response to long-term Covid prevention and control.
訳:5月3日、W.H.Oは最新のCovid管理計画を発表し、緊急対応から長期的なCovidの予防・管理へと移行する今後2年間のCovid管理方法について、各国の指針とすることを意図しているとした。

が含まれている。

そのリンク先には、5分野10項目に渡っての方針が書かれていて、新型コロナとの戦いは終わっていないが、緊急事態対応よりより長期的かつ新型コロナに留まらない備えについて20枚のスライドで提言している。個人的には2番目の柱のCommunicty protectionのインフォデミック対策を含むリスクコミュニケーションに注目する。もちろん、柱1や8の経済格差による対応格差の解消も重要だが、情報の透明性の確保については1番目に位置づけてもよいのではないかと感じた。

どんな組織でも完全ではありえないが、特に治験の分野では、確からしさを高めるために制度を進化させてきた。緊急事態においては、緊急承認も連発されたし、手探り状態の中で後に適切でなかったことが判明した治療も実施された。日本ではアビガンやイソジンのような知識を有しない政治家の発言があった。一方で、飛沫の飛翔の分析などに何らかの形で予算が付き、従来にない知見が得られた面もある。もう緊急対応ではなく定常的な対応に軸足を移す時期を迎えてもよいのだろう。ワクチンも治療薬もリスクがゼロになることはない。確率的に評価するしかないし、健康な人が健康を害するリスクと、罹患した人を救える確率に対してどう重みを与えるかも単純には答えは出ない。天然痘も麻疹もワクチン問題が解決できているわけではない。

そのうち、日本の報道機関からもWHOのFrom emergency response to long-term COVID-19 disease management: sustaining gains made during the COVID-19 pandemicを解説する記事が出てくるだろう。自分ごととしてどう取り組むのか考えるのは良いことなのではないだろうか。残念ながら、具体策の部分はまだ策定中で含まれていないが、一般の人に取っては、全体的な考え方を理解することの方が重要だと思う。特に、政治家や行政が適切な行動が取れているかを検証するために有効だろう。反ワクがすべて虚偽だとは思わないし、従業員に出社やマスク外しを強要して良いか否かも意見はわかれるだろう。リスクコミュニケーションが機能するためには発信側にも受信側にも訓練を必要とする。少なくとも、勢いで思考停止してしまうようではその個人だけではなく社会を危機に晒す。

WHOの文書は、教師の助けがあれば中学生でも理解できるだろうし、議論もできるはずだ。考え方のフレームワークを整備していくことの重要性を理解する良いテキストにできるように思う。適切な訓練を受ければ、おそらく憲法議論も変わっていくだろう。ことさらに脅威を煽って勢いで思いつきの施策を打っても持続性は期待できない。

※画像はWHOのFrom emergency response to long-term COVID-19 disease management: sustaining gains made during the COVID-19 pandemicの表紙のキャプチャ

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