IEEEのComputer誌にメガトレンドの記事が出ていた。
デジタルトランスフォーメーション、サステナビリティ、人工知能(artificial general intelligence)にシフト中らしい。 https://t.co/EfQWk9iqPH
— Takayuki Hagihara (@hagi60) July 10, 2023
IEEEの意見というわけではないが、納得感はある。デジタルトランスフォーメーションは2000年頃から2015年頃にかけてS字を描き、サステナビリティが10年頃から25年頃、(専門でない)人工知能が20年頃からのトレンドとしている。デジタルトランスフォーメーションはWeb2.0として捉えればよいだろう。2015年頃にはデジタル・ガバメントは実装期に入りブレークスルーの時期は過ぎたと言っても良い。日本は周回遅れだが、枯れた技術は揃っているから、模倣を恐れなければ技術的にはキャッチアップは容易だ。サステナビリティは地球環境関連ITとほぼ同じで、最近は台風の予測もテレビでアメリカの予想では、ヨーロッパの予想ではと引用されるようになり、世界的には全球で環境を捉えるのがトレンドになっている。気象分野では日本は非常に優れていると思っていたが、アムステルダムでは5年以上前からスマホで雨雲レーダーを見るのが当たり前になっていたり、いつのまにか先行している感は失われている。ただ、ガラパゴス的な印象はあるものの丁寧さ、細かさでは比較優位にあるように感じることはある。情報システムも丁寧さで勝っていると感じたことはあったが、アーキテクチャから考える能力に遜色がないのに、目の前にある問題に対応するためにアドホックな対応に走ってしまう傾向があった。政治リーダー、ビジネスリーダーのスケールで見劣りする(私自身は、人のことをとやかく言えるような実績はないが…)。
バブル期とは異なり、日本の経済優位性は失われ、少子化で研究者も減少。人口が多く経済力の大きな中国や、一国の規模は小さくても連合体になったことで、多様性を生かした競争力を備えた欧州に正面から挑むのは現実的ではない。人工知能の分野でもメガトレンドを引っ張るリーダー格になることは困難だろう。
一方、メガトレンドの先端ではないが、デジタルトランスフォーメーションは完成の域に達しているわけではない。考えようによっては、メガトレンドのSカーブがサチってきているこの分野でグローバルに通用するシステムで貢献することは可能な気がする。ヨーロッパと連携して汗をかけば、30年後には世界のガバメントインフラのメンテナになれる可能性はあるだろう。
人工知能トレンドには間に合わないとしても、次のメガトレンドでは不可欠なプレーヤーとして活躍できたら良いなとは思っている。個人的には、デジタルトランスフォーメーションはWeb3で再トレンド入りするのではないかと思っている。現実的な人は、DAOも国家に依存しない仮想通貨も絶対に成功しないと言っているが、パラダイムシフトが起きる可能性は十分ある。人工知能だって、繰り返し失望されてきたが、再びブームを迎えている。望む人がいて、諦めなければ時間がかかっても進化は起きる。自分が生きている間に、その恩恵に預かることができないとしても理想を目指すのは楽しいことだ。
サステナビリティはデジタルツインと密接に関わっていて、2Dの世界観や過去の技術の延長線ではなく高品位でモデル化可能なフレームワークの標準化は不可欠だろう。すぐには実装はうまく行かないだろうが、遠くを見る人を大事にしないと未来はない。新しい挑戦の多くは失敗に終わるが、天気予報の進歩と同じように、モデルの高度化は失敗の繰り返しの上で進歩する。精度が上がれば、従来無視するのが適当と思われてきた要素がモデル推論の質の低下を招いていることに気付かされる。計算力が上がれば、求められるアーキテクチャも変わる。
一人でやれることは小さいが、一人としての歩みを止めてしまうのは望ましいことではない。自分がやれそうなことを倦むことなく続ければよいのだと思う。
ちょっと面白いと思ったのは、
Some participants in the process believed that ethics and diversity, equity, and inclusion (DEI) are megatrends.
この検討に参加した中には、倫理と多様性、公平性、包摂性 (DEI) がメガトレンドであると考える人もいた。
とあったことだ。その続きにあるように、それはメガトレンドと捉えるべきではないだろう。もっと深いところで人権、倫理、DEIを置くという考え方に賛同する。科学者は予想屋(山師)ではないが、誠実に夢を見ることで、未来は開けていくのだと思わされる記事だった。