Drupal Module定点観測 2024.01

hagi に投稿

私は、1ヶ月から3ヶ月に一度、Drupalで新規にリリースされたモジュールの一覧を検索して、ざっと目を通すことにしている。冒頭画像のようにSort by: Last releaseをつけると、新しくアップされたモジュール順に出てくるので、目を通していると今コントリビュータが何にトライしているかが見えてくる。何をやっているのか理解できないものもあるし、単にバグフィックスでアップデートされたものもあるが、こんなモジュールがあるのかと驚かされることもある。その瞬間には役に立たなくても、自分の記憶の片隅に蓄積されていくので、お客様からの問い合わせなどで拡張機能が必要になった時に役に立つことがある。

最近、出張中はバタバタしていてサボっていたが、正月明けで会社の決算も思いの外簡単に終わったので、今日は眺めてみた。

最初の10モジュール

  1. Entity Reference Hierarchy

    エンティティ参照フィールドの再帰版。DBALを利用して実装している模様。部品表を作る時などに使えるかも知れない。

  2. Entity Translation Unified Form

    翻訳可能なノードなどの編集画面を多言語同時変更可能にすることができる。

  3. Field Label

    フィールドラベルにCSSを当てられるようにできる。やや制約が厳しい感じ。

  4. Search API Coveo

    Enterpriseサーチエンジンのcoveoを組み込むための拡張モジュールらしいが、まだalphaで解説もない。

  5. Varbase Core

    Drupal10をベースにしたCMSディストリビューションのVarbase - The Ultimate Drupal CMS Starter Kit (Bootstrap Ready)のコア部分。"Starting a new Drupal project? Consider Varbase and save over 200 hours of configuration and development."とあるので、素のDrupalより簡単だし、サポートもあるよというのが売り。Drupalのプロフェッショナルサービスで収益を上げていく一つのビジネスモデルだと思う。627サイトが利用中とある。ディストリビューション利用数としてはDrupal Commerceの42,492には遠く及ばないが、仮に利用中の1割、63社が有償サポートを依頼していれば、決して小さくないビジネスになるだろう。

  6. Config Features

    D7時代には大人気だったFeaturesのConfig版のようなものらしい。D8以降、Configuration entityがエキスポート可能になったが、UUIDが含まれていて、一致しないとインポートできないという課題がある。まだ8サイトしか利用実績がないが、潜在需要はあるだろう。ただ、Configuration entityにはリビジョンをどうするかといった課題も残っていて、まだまだ変化が起きるのは必至。ちょっと手を出し難い機能だと思う。

  7. agGrid

    ag-Gridという表ライブラリとの統合を試みているモジュール(Qiita記事)。Webサイトでは表の扱いはしばしば問題になるので、期待したくなるサイトもあるかもしれない。

  8. Attribution & Licensing

    コンテンツの版権に関する機能。D7時代からCreative Commonsに対応する機能などが挑戦されてきたが、現時点で使えそうなものとしてはこのモジュールしか無いのではないかと思う。個人的には非常に興味深いと思っている。ただ、現時点では63サイトしか利用実績がない。とは言え、利用状況を見ると伸びてきているので注目すべきモジュールと考えてよいだろう。

  9. REST Views

    ViewsのREST対応機能。"The reason this utility can be necessary is due to Drupal core's views being tightly coupled with the render system, which implicitly assumes that it is working with HTML output. "とあるようにViewsはDrupalに不可欠な機能である一方レンダリング機能が不可分なため非常に悩ましい。本質的にはCoreで分離を奨めるべきだろう。ヘッドレス化を進める場合の回避策としては機能すると感じた。

  10. Commerce Shipping Colissimo

    Drupal Commerceの出荷(物流)機能に仏Colissimoを統合するモジュール。まだ、利用実績が提示されておらず、セキュリティカバレージの対象にもなっていない。

10件のモジュールの中で、私が一番興味深いと思ったのは、Attribution & Licensingだった。その他、Commerce Coreがリリースアップされていたり、UKのLocalGov Drupalから住所と緯度経度を結びつけるGeo Entityの初版リリースがなされていたりした。

もう一つ興味深いと思ったのは、1月3日beta4リリースのOpenAI / ChatGPT Integration。ECAとの統合事例なども書かれていて、これは時間を見てインストール、使用して見る必要があると感じた。

150リリースをチェックしても10日分に満たない。全部のモジュールが生き残るわけではないが、定点観測を何年か続けていれば見通しが良くなるのは間違いない。Meetup等で、最近1ヶ月のリリースで気になったものがあれば発表するといった定例議題を設けるのも良いのではないかと思う。

タグ
feedback
こちらに記入いただいた内容は執筆者のみに送られます。内容によっては、執筆者からメールにて連絡させていただきます。