インド、フランス、UK、イランそして東京

今年は、選挙のニュースが多い。

インドでは圧勝と言われたモディ氏の政党が予想外に苦戦した。フランスで下院選挙で日本では極右と書かれている国民戦線が大幅に議席を伸ばす見込みになっている。UKでは保守党が惨敗し、政権交代。イランでは、改革派の大統領が当選した。2024年7月7日にはフランスの下院選挙の2回目と東京都知事選挙がある。

どこまでどんな情報ソースを信用するかは難しい問題だが、フランスでは国民戦線の脱悪魔化が勝利の理由とされ、UKでの労働党の脱極左化(脱新自由主義化)が勝利の理由とされている。

いろいろな意見があるが、私は政権の流動化の最大の理由は格差の拡大にあると思う。

現実問題として政治には金がかかる。勢い、金持ちの支援を得るのが政権確保、維持に対する手っ取り早い施策になる。アメリカなどはその最たる例だろう。裏金問題の自民党も同じ穴の狢である。権力維持のためなら宗教とだって手を結ぶ。金のためなら悪魔とだって取引するということだ。

フォーリン・アフェアーズ・リポートの切り崩されたリベラルな秩序 ―― 格差を是正し、社会的連帯を再生するにはのアブストラクトに次のように書いてある。

欧米におけるポピュリズムの台頭は、リベラルな民主社会の社会契約が破綻していることを物語っている。経済格差が人々を異なる生活環境で暮らす集団へ分裂させ、社会の連帯感そのものが損なわれている。中間層や労働者階級を犠牲にしてグローバル化の恩恵を富裕層が独占する状況が続けば、米経済が依存するグローバル・サプライチェーンや移民受入への政治的支援は今後さらに損なわれていくだろう。ポピュリズムは、タフさとナショナリズム、さらには移民排斥論を基盤とする、人受けのするはっきりとしたイデオロギーをもっている。開放的なリベラルな秩序の支持者たちがこれに対抗していくには、同様に明快で、一貫性のある代替イデオロギーを示し、労働者たちが切実に感じている問題を無視するのではなく、それに対応していく必要がある。

このアブストラクトは簡潔に現在の政権流動化を説明していると思う。

グローバル化の恩恵を富裕層が独占する状況というのは事実だと思うが、富裕層は地球温暖化の阻止への貢献もある。つまりグローバル化の恩恵を富裕層が独占する状況というのは個々人の認識の問題とも言える。富裕層を富裕層というラベルで括って敵とするのは適切な判断とは思えない。(私は保守は亡国と思っているが)同時に保守派も絶対悪ではない。良いこともしないわけではない。

UKの保守党はいつのまにか富裕層を弁護する政党になって、ブレグジットを成功させ、グローバル・サプライチェーンの恩恵を得られなくしてしまい非富裕層を追い詰め、格差あるいは格差認識を拡大した。苦労をして上り詰めたスナク氏も新自由主義の罠に堕ちたように見える。彼は本心から後悔し、反省しているのではないかと思う。

マクロン氏もモディ氏もホメイニ師も自分の失敗に気がついていると思う。民は弱いが強い。

中東は距離的にも文化・情報的にも遠いので判断が難しいが、イランは王制を廃止し、血統主義から脱することができたのは良かったと思うが、その際に宗教の力を使ってしまったつけは大きいと思う。今回は、溜まったつけがもう隠しきれなくなったということだろう。閉鎖的な政策は長い目で見れば必ず破綻するという新たな証明となったのだと思う。短期的なことはわからないが、ホメイニの評価は厳しいものになる可能性がある。それでも改革派を一人許した功績は評価されて良いと思う。

安倍が死んで日本のポピュリズムは勢いを失ったが、慣性は無視できない状況が続いている。むしろ、ナショナリズムの多極化が進んで不安定さは増している感じがある。格差が拡大し、真面目にこつこつ頑張ってもどうにもできないという思いが強くなると、挑戦者は何をしても良いという危うい状態に至る。山上氏もそうだったのかも知れない。決して許されて良いことではないが、一発の銃弾は世界を変えることがあるのは現実である。

一つ私が確信しているのは、自らの保身のために事実を変える、あるいはごまかす人に権力を与えてはいけないということだ。取り巻きも結局不幸にしてしまう。保守は亡国である。

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