知人の紹介で存在を知って図書館で借りて『バルトの光と風』を読んだ。エストニアでは、タリン、ナルヴァ、タルトゥでいずれも訪問した場所。25年前はこんな風だったのかと思わされる部分もあれば、記載されている店が現存していたりして興味深い。ラトビア、リトアニアはそれぞれリーガ、ビリニュスに数日滞在しただけなので、今ひとつ引き込まれなかったが、3カ国の違いへの言及には感じるものがあった。
1999年を思い出すのは結構難しい。自分の過去をGoogle Photoで振り返ってみると、同時期にハワイに観光旅行をしていた。デジカメは存在していて、画素数は少ないが、何枚か写真が残っている。本書では、Webでホテルの情報を調べているが、まだセルフサービスの時代ではない。日本では携帯電話はビジネス分野で普及が進み、安価なPHSが市民権を得た頃の話で、国際ローミングが始まるのは2009年頃、iPhoneが2007年で、Google Mapsもその後だから今と移動の容易さは全く異なる。ましてや、Uberのような移動手段も存在しない。一度便利さを享受して、それに慣れてしまうとなかなかその昔を想像することはできない。デジタルネイティブ世代にとっては説明されても容易には理解できないだろう。日本のパスポートは強く、VISAが必用な国も少ない。本書では、ラトビアだけが要VISA国。パスポートにICチップが入ったのが2006年。コストがかかるVISAを避けるためにはデジタル化は重要なのだ。
書籍冒頭の最後の写真とは別の場所だが、雰囲気は非常に良く似ている。1999年も荒れていない場所があったことが分かる。
タリンの次にはナルヴァに向かっている。ロシア国境で、私も今年を含めて何度も行った場所だ。対岸のロシアの城の印象は当時と全く変わらないが、書かれている内容からすると今より大分治安は良くなかったようだ。今は、全く危険を感じない街である。
タリンに戻った後は、タルトゥ、パルヌに行っている。どちらの街の記述も一年前のパルヌ、二年前のタルトゥで感じたものと大差ない。パルヌからバスでリーガに向かっているので、Valga経由ではなく海沿いのルートなのだろう。リガの写真も私の最近の訪問で見た景色と大差ない。つまり25年前も遠景で見れば今とあまり変わりないということだ。
ビリニュスの記載内容も写真も私のビリニュス体験とはやや差を感じるものだった。四半世紀の間に何かが変わったのかも知れない。
遠景は美しいが、街を歩くと結構再開発が必要だと思われる場所は多かった。
もう一度、行くと印象が変わるかも知れない。
今は、Amazonなどで中古本を買うか、図書館で借りるしか無い書籍だが、長く保存されて良い本だと思う。エストニアに興味をもった方にはぜひ読んで欲しいと思う。