WORK SIGHTに「シェアの概念を取り入れて、オフィスを脱・類型化する」という記事が出ていて、そこに
サービス側が提供しきらないことの面白さですよね。そこがシェアカルチャーの本質なんでしょう。明確に役割が区切られない状況を楽しむことで、シェアをポジティブにとらえることができるのだと思います。
という文章があって、ああそういう事かと得心した。
コワーキングスペースに魅力を感じるようになって5年。そして、森ビルの平河町ライブラリーの閉鎖と共に行き先を失って間もなく2年になる。
ワークスペースとしての機能性はそれはそれで重要なのだが、コワーキングスペースには違う魅力があり、多くのスペースにお世話になってきた。コワーキングスペースでは、運営者のキャラがその居心地に大きな影響を与える。何だか行きたくなるスペースと、リピートまでには至らないケースがある。一番インパクトの大きかったのは、今年3月に場所としては閉鎖したPAX Coworkingで、正直に言えば設備的には整っているとは言えなかったのだけれど、経堂に用があったり、イベントの機会があれば喜んで足が向いたスペースだ。佐谷さんの魅力は特別だが、佐谷さんがそこにいない時でも常連が醸し出す雰囲気が特別な空間を作り出す。先の、「サービス側が提供しきらないことの面白さ」が機能していたのだと思う。
2017年から次のスペースを探して、利便性や自分にとっての快適性から未だに自分の常駐スペースは決まっていない。一方で、自分のいる街、近くの喫茶店やバーには頻繁にでかけるようになった。谷根千に住んでいて、特に印象に残る空間はHAGISO / HAGI CAFEだ。古い建物なのだが、展示空間が併設されていてとても居心地が良い。多目的施設に分類すれば良いのかも知れないが、私にはシェアカルチャーの匂いがして心惹かれるのだ。先の、「明確に役割が区切られない状況を楽しむ」が機能している。
一人または二人程度で運営しているバーには、コワーキングスペースとよく似た特性がある。運営者の魅力もあるし、常連の魅力がある。私が時折出入りするのは、若くて賢くて車だったりミニ四駆だったりにはまったりする店主がいるIPAバーのHEDGE8、平面工房の先生がやっている喫茶店のGigi、他にも数件、萩原さんと呼んでもらえる店がある。チェーン店と違うと思うのは、その空間にいる間は、自分もその空間を構成する要素として存在できる点にある。もちろん、所謂「中の人」とは違うのだが、客を含めて空間が特徴づけられている。
小さく見通しの効く空間で成り立つシェアカルチャーは、規模が大きい場所では一般には希薄になる。しかし、建築設計、空間設計次第でかなり居心地は違う。完璧に準備されたピカピカのオフィスとあえて最後の少しを自分たちの手で何とかしないといけない空間は違うのだ。
人それぞれという面はあるだろうが、多くの人に居心地の良さを与える場所はある。何らかの助け合いが必要で、それが難しくない空間が、心地よい空間となるのではないか。そんな風に感じた。