The Smarter Working Manifesto

GCUCで講演を聞いたPhilip Vanhoutte氏が共著している本なので、手に取って読み始めた本。ここしばらくサードワークプレースとABW - Activity Based Workingの関係を探っていたので、とても参考になった。本書の中に出てくるLeesman社はサーベイサービスを提供している会社だ。標準アクティビティを21に分類して、どう賢い働き方を実現するかを検討する調査サービスを提供している。5年の活動の結果、まだまだ少ないとはいえ、大量のサーベイ結果が収集され、ベンチマークが可能なまでに成熟してきている。

ABWで物事を捉えようとするときに一度は目を通しておく価値のある書籍だと思う。

Amazonの書評に書いた内容は以下の通り

2014年、このレビューの5年前に刊行された本で、技術的な環境は当時とかなり変化しているが逆に変わらない事と変わってしまう事が分かって有用だと思う。
ベースとなる考え方はActivity Based Workingで、どんな仕事をする時にどんな環境が必要なのかを検討し、提案している。人と仕事と環境をどううまく組み合わせるかを考えることで、より良いワークスタイルというかライフスタイルを考える本と言っても良い。
第4章では、「ワークライフバランスなど嘘っぱちだ」という主張で始めている。少し、冷静に距離を置いて人間の活動(Activity)を考えれば、ご飯を食べることや睡眠をとることは仕事ではないが、そういった生きていくためのアクティビティが適切に行われなければ仕事での成果を出すことはできない。ワークライフバランスという考え方には「仕事の時間帯」と「生活の時間帯」を分離して考え、「生活の時間帯」を確保できる事がQOLの向上につながるとするが、ABWの整理の仕方で考えれば、全てはアクティビティとなる。そのアクティビティが家族のいる場所でなければならないケースもある。また、働く事はそれ自体が生きて行く上で重要なアクティビティである。全ては、様々な制約の中で好ましいアクティビティの実施の仕方を探っていく旅であると説いているように感じた。
本書はマニフェストと書いてあるが、簡潔にまとめた宣言は書かれていない。The smarter working manifestoは「より良く働けるようにするためのヒント集」と取るのが適切かもしれない。

ABWに近い考え方は、20世紀前半からあるようだ。しかし、デジタル技術の進展によって見える化が進められるようになったことでABWが現実に適用できるフレームワークに進化したのだと思う。様々な生産性指標が安価に計測できるようになり、情報共有のツールが飛躍的に進化した事で、特定アクティビティの実施につきまとう制約条件も大幅に緩和された。インターネット時代の賢い働き方は現実のものになった。

一方で、人間自身は環境変化に戸惑うものだ。本書でもエバンジェリストがどういおうともオンサイトの重要性は変わらないと書いてある。安易に技術があれば会わなくたって大丈夫と思い込むのは間違っていると私も思う。

教条的にならずに、何が現実的な道なのかを探る姿勢をもってワークスタイルを考えるためのヒントに溢れている。