コワーキングは人を輝かせる力がある

テレワークや働き方改革に関する話をお客様としている際に「オフィスにいるおじさん、おばさんをおしゃれにしたい」という声を聴くことがある。

私が初めてWeWorkに行った時驚いたのは、受付に格好の良い男女がにこやかに並んでいて、ロビーにいる人たちがみなオシャレだったことだった。ワークスペースに清潔感があって、一種の社交場になっていたのである。ちょっと悪い言い方をすれば、WeWorkで働く俺(私)はかっこいい、という感じだったのだ。そこに喫茶のカウンターがあり、バリスタがいて、休憩時間には主にバリスタとの間の小さな会話がある。しかも、何度か見かけている間にバリスタが、客と話をする時に隣りの客を意識して話題を選んでいる事に気がついた。来場者をゆるくつないでいたのである。

オフィスにいる業務歴の長いおじさん、おばさんにとっては、オフィスはなじみの場所であり、オフィスにいる人たちの中では年長者として少なくとも形式的には敬意を払われる存在になる。言い換えれば、緊張感を感じない場所になっているのである。

コワーキングスペースとしてWeWorkを捉えると、自社でない人に日々出会うことが前提となっているスペースであり、常にある程度緊張感を持っていなければいけない。また、他社の人に見られている自覚を持たなければいけない。周りがキラキラしていれば、オシャレじゃない自分には恥ずかしい居心地のよくない空間になる。在宅と、オフィスであればオフィスの方がちゃんとするだろうが、オシャレな人が集うコワーキングスペースなら、もっとちゃんとしないと恥ずかしい。もちろん、そういうことを気にしない人はいるけれど、やはり輝いている人はまぶしく見える。

どういう空間を作るかは、運営者側の力量次第だ。スペースがそれほどきれいでなくても、スタッフの魅力で勝負するところもあるし、内装を工夫してコワーカーの「ちゃんとしている度」を向上させることに成功しているスペースもある。いろいろな運営形態があるが、コワーキングスペースは設備要件だけで繁盛が決まるのではなく、コワーキングスペースはそこにいるコワーカーの振る舞いの影響を強く受ける。生産性高く働くスペースであるのと同様に、仮に直接的な接点がコワーカー同士になかったとしても影響しあって全体の雰囲気を作り出すことになる。

Leesmanの分析資料を読んでいると、固定席とフリーアクセス席での従業員満足度にほとんど差が認められないことが分かる。固定席は自分の城でコストはともかく満足度では圧倒的に有利なように見えるのだが、実際にはそうでもないのである。フリーアクセス席は占有でない不利があるのは明らかなので、その不利を相殺するような有利があると考えるのが妥当だろう。オフィスとサードワークプレースにも類似のトレードオフがある。

おじさん、おばさんがオシャレになって輝くようになってきたら、きっと会社の業績も上向くだろう。適度な多様性は適度な緊張を生み、人を成長させ、輝かせる力がある。