一般的な日本人とアメリカに住む一般的な人では体格にかなりの違いがあるが、1.8mという距離はどちらも一つの目安になっている。1坪は1.8m平方なので、じっとしていれば、1人あたり1坪の空間は互いに1.8mの距離が保てる空間ということになる。間を通り抜けることを考えると倍または4倍の空間が必要となる。
コクヨの「オフィス移転の基礎講座」を参考にすると、現在のオフィスの一人あたりの面積は8.55平米、デスクエリアが6割(59%)とあるので、デスクワークの空間は1辺2.2m程度ということになる。移動、すれ違いも1.8m取れるようにするには足りない大きさになっている。また、一般的なデスクの幅は1.2mで、これを並べると隣の人との距離は1.2m未満しか取れない。フリーアクセス等を意識した6mの長テーブルだと3名以上は詰め込めない。
内緒話はリアルではできなくなり、音を通すガラスで仕切られた対面2個室とかそういう空間で行うようになるのかも知れない。それを通り越して、全員仕切られたブースで作業するような形に変わるかも知れない。もし、そうなったら、何でわざわざオフィスに来るのか意味がわからなくなってくるような気がする。
タッチダウンオフィスは、防音性がある閉鎖ブースの集合体で、大型ディスプレイとChromebookが整備されているような形に変わる可能性がある。メガネ型なら他人から見えないので閉鎖ブースはガラス張りでも良いかも知れない。そのブースに入れば、自社の人であろうと取引先の人であろうと恋人であろうとオンラインで相互につながることができるようになる。もちろん、対面に慣れたら、やがてオンライン会議室につないで複数人で議論するのにも慣れるだろう。
飲食店は、客席エリア1坪あたり1.5席(高級店)から2.7席(庶民向け)とする記事があり、どうやっても1.8mの距離を保つのは難しそうだ。また、席間1.8m以上だと、会話が成り立つ気はあまりしない。4人位まで予約ベースで密集した形で会って、2週間以内に誰かが感染したら、連絡の義務を課すというような形になるのだろうか。マイナンバーのようなIDを活用して、移動履歴をトレース可能にする技術があれば、緩和しても良いかも知れない。
面積あたりの賃貸料が同じだとすると、飲食店を含むシェアスペースは相当値上げしないと採算が取れなくなる。もちろん、生活者の所得が上がらなければ値上げには耐えられない。ということは、賃貸料も下がらないといけないが、建築物は大幅な改修または建て直しが必要になるから、地権者からすると上がりは減って経費は増えるというダブルパンチになる。
恐らく、ワークプレースは環境変化に対応していくことになるだろう。ペーパーレス・デジタル化は徹底するしかなくなるはずだ。飲食店は、店舗でのサービスは相当高額になり、弁当型への移行が進むかも知れない。
日本は、財政上の不利を抱えているので、国が借金を増やして時代変化を推進して乗り切るのは難しい状態にある。すごく辛い時期を迎えそうだが、儲かる会社は出る。その会社が日本の会社かどうかは分からない。ともかく、COVID-19で社会は構造的な変容を許容せざるを得ないだろう。オフィスワークを行うワークプレースは相当影響を受ける。うまく時期を捉えて大成功する事業者も出るかも知れない。
余談になるが、私がまず間違いなく来るだろうと思っているのは、総監視社会だ。どうやって権力者が恣意的に情報を利用できない形で総監視を実現するかが重要だと思う。