コリビング、コワーケーション、自立

今、コリビングに関わるイベントに関わっている。

バリにHubudというコワーキングスペースがある。欧州のノマドワーカーには良く知られているが、1か月、2ヶ月単位で住んで仕事をしながらバリのバカンスを楽しむような人が実際に存在している。

Hubudのコリビングのページを見るとSoft Landing in Baliとあり、基本的には身一つ(もちろんPCは持参)で住み始められて、現地での生活の仕方やお困りごとの解消をサポートし、コワーキングスペースへのアクセスをつけ、コミュニティへの参加が可能になると書かれている。リモートワークで生きていける人であれば、リフレッシュや新しい出会いを期待しながら、Hubudで過ごすというのは特に南国が好きな人には魅力的である。

コワーキングの原型は1995年のベルリンのC-baseにあるとされているが、今のように認知されるようになるまでに約20年。フリーランス、個人事業主、スタートアップの居場所として、かなり当たり前に考えられるようになり、企業もそういった多様性のある人の集まる場所に関心を示すまでになった。立派なオフィスを持つIBMやGoogle等がわざわざコワーキングスペースに出店を持つケースも増えている。サンフランシスコではAIやデータマイニングに関わる技術者が集まるスペースは活気に満ちていた。ニューヨークにも複数の大規模スペースが林立し、ダブリンでもミラノでも印象に残るスペースを見た。

コリビングは、私はHubudのSteve氏から数年前にプレゼンを聞くまで真面目に考えたことは無かった。しかし、実際には日本でも同様の機能を有するゲストハウスが既に存在している。Facebookには旅人経営者の会という公開グループもある。先日東京で最初のコワーキングスペースであるPax Coworkingをたたんで次のステップに進みつつある佐谷さんとカオサンの小澤さんが立ち上げたものだ。言い方はちょっと悪いが、ちょっとヒッピー臭がある。お二人ともとてもまじめな人なのだが、先頭を走る人たちにはどこかアウトロー感が漂い、日本の企業文化との隔たりを感じてしまう人もいるかも知れない。

自分自身はCoworking Europe関連でCopass Campを通じて疑似コリビング体験を積んだ。たった一週間だが、Coworking Europeの出席者の合宿のようなもので、相部屋で過ごし、交流イベント、勉強会、飲み会を繰り返す。昨年のダブリンでは、イギリスの人とブラジルの人との3人部屋、一昨年のブリュッセルでは、互いに初対面のロシアからの人2人との3人部屋だった。その前の年はミラノで一人部屋を取ったのだが、その経験で一人部屋で過ごすのはあまりにもったいないと感じたのだ。たった一週間の相部屋で深いつながりが生まれるわけではないが、たった一週間の体験で、それまでの自分とその後の自分は変わっている。ちょっと大学や会社の同期と共通するような同志感は得られる。さらに、共にコワーキングに関わる所にいるために共通の話題にも事欠かない。オープンソースコミュニティとも近しい感じもある。

私はコリビングには大きな可能性があると思っている。先日、ゲストハウスで働いた経験のある人から、貯金使って滞在する旅行者ではなく、リモートワークをしながら、つまり自国で稼ぎながら一定期間滞在している国際ノマドにあった話を聞いた。そういった国際ノマドがゲストハウスの共有スペースにいて、仕事をしたり交流したりしていると、ゲストハウスに良い空気が生まれるのだという。現実の厳しさはあるだろうが、一つのロールモデルとなるようなすごいケースだと思う。正直、憧れる気持ちがあるのを否定できない。

個人の視点からすれば、相当な鍛錬と自制心がなければ国際ノマドになるのは難しいだろう。しかし、コリビングを使いこなしながら、幅広く多様性の高い環境に身を置く事で、さらに付加価値を高める機会も増えるし、世界は広い。広い世界には、様々な能力者がいて、国際ノマド同士の国を越えた助け合いは、新たなイノベーションを生む可能性を秘めていると思う。成熟度の高いコワーキングの未来と言えない事もない。

コリビングに注目している。