World Economic ForumのサイトにCOVID-19: how many remote workers are there in different parts of Europe?という記事が掲載されている。
まずAround 5% of Europeans regularly worked from home before COVID-19, that figure has now risen to around 12.3%.と書かれているので、コロナ前は約5%が日常的に在宅していたのが、12.4%に増えたと読めばよいだろう。あまり意外感はないのだが、国別データで見るとばらつきが大きいのが気になった。フィンランド、ルクセンブルグ、アイルランドでは、2割を超えていて、ノルウェー、スイスは5%を割っている。フランス、ドイツは15%前後。エストニアは、思ったより低くて12.6%だ。もちろん、それらの国の中でも都市部と郊外では傾向は違うだろう。
私は、コワーキングヨーロッパ会議のタイミングでここで数字が上がっている国々を訪問しコワーキングスペースを含め働き方や働き方に関する姿勢に触れるようにしてきた。フランス、ドイツはコワーキングMovementでは明らかにフロンティアで、それに続くスゥエーデンは2015年頃には設立ラッシュが起きていたように思う。一方、ヘルシンキではRegusはあったものの、あまりコワーキングが活発だった印象はない。ただ、オスロも含め、何となくベルリン的なスタートアップ旋風はあった。
ビジネスのデジタル化とコワーキング、テレワークの隆盛は明らかに相関関係があると思う。同時に、EUの域内移動の自由の効果は計り知れないほど影響が大きい。日本で地方から都市部に引っ越したり、逆に都会から自然豊かな場所に引っ越したりするように自分の好きな街を選んで動く。コワーキングスペースがエントリポイントになっているケースも有り、まずは街に出てきて、状況を掴みながら、どうするかを考えるようなケースも見てきた。故郷の仕事をリモートで行う人も一定数いる。オランダ(ユトレヒト)発のSeats2Meetのように企業と働き手あるいは働き手同士をつなぐようなサービスもあり、オフィスと仕事のアンバンドルは進んでいる。アメリカでもわざわざ大企業がコワーキングスペースに部屋を借りるケースは少なくない。そういった、経験が高まってくれば自然とABW的な考え方に慣れてくる。何となく20%程度が日常的に在宅勤務を選択するというのが落ち着きどころな感じがする。今後技術がさらに進めば5割程度になるかも知れない。
その数字が低いところは、何となくリテラシー格差が大きい気がしている。もちろんそれぞれの特徴があって良し悪しではない。
誰でも、家族、地元のコミュニティ、職業(企業)コミュニティ、その他(教会など)のコミュニティなど、複数のコミュニティと関わりを持っている。コロナによる強制テレワークを経て、顔をあわせることの重要性と、多様性への接点の重要性を認識できた人は増えただろう。だから、ワークスタイルが昔のように戻ってしまうことはない。恐らく、疾病のリスクが問題にならなくなったら、ワークスペースのあり方は大きく変わる。
顔をあわせて共に行うことでうまくいきやすいプロジェクトワークや、ボランティアワークのためのスペース、自宅よりも集中しやすい場所とか、弛緩する場所、旅や新たな出会いも総合的に考えていく時期が来るだろう。
関連して、会社での人間関係を含めてコミュニティに参加するスキルを獲得する訓練が今後さらに重要になると思う。コミュニティに忠誠を誓わせるスタイルは化けの皮がはがれると破綻するだろう。個が自由になり、多様性を許容しつつ、目標は共有できる形を目指すのが王道になるのではないかと思っている。もちろん、一人の人が関わる目標は一つではない。
ふと、この地図を見ながら、アムステルダムは現代世界の中心あるいは重心のひとつなんじゃないかなあと思ったのであった。移動の自由は本当に大事にしないといけないと思う。
※画像はStatistaのWhere Europeans Get To Work From Homeから引用したもの